「俺がなりたかったもの?」
裕二:「うん、将来なりたかったものって、何?」
「そりゃお前、友情(ゆうじょう)に熱い男か。」
裕二:「何それ?」
修二:「だからあれでしょ?あの、友達思いの男ってことでしょ?」
「そうそう。」
裕二:「でもそれって、普通(ふつう)じゃん。」
「普通じゃないよ。たとえばな、ある日突然(とつぜん)、友達がスーツケースを持ってやってくる。そのスーツケースの中には、バラバラ死体(したい)。わけあって、誰かを殺して(ころして)まったんだ。」
修二:「で?」
「で、そいつは俺を頼って(たよって)やってきた。」
修二:「いやでもさ、それって、殺人者(さつじんしゃ)ってことだよ。」
「わかってる。わかってる、でもな、俺はそいつの話を最後まで聞いてやるわけよ。これが本当の友情。男(おとこ)の熱い友情ってわけよ。」
裕二:「でも、警察(けいさつ)に言わないの?」
「そういうことは、後!」
裕二:「後?」
「とにかく、友情の話を最後まで聞いてやる!これよ。」
裕二:「兄の友達、スーツケース持ってる。」
「スーツケース?」
彰:「大変なことになっちったよ。ヤベェよ。」
修二:「大変な事って?」
彰:「話、聞いてくれる?」
修二:「聞く、聞くからさ、その中何が入ってんの?」
彰:「見たい?」
修二:「何それ。」
彰:「お泊り(おとまり)セットなの。」
修二:「待って!お前、うち、泊まる気?」
彰:「家出(いえで)してきました。」
修二:「家出?」
彰:「CHIS!」
修二:「CHIS!って何?CHIS?」
彰:「おぉ!パジャマは上をズボンに入れるのよ。イン!だよ、イン!ババちゃんもイン!」
裕二:「何で入れるの?」
彰:「ボンボンが冷える(ひえる)からよ。こんなの人生(じんせい)の基本(きほん)ですから。ボン!修二もイン!」
修二:「俺はいい、止めろ!」
修二:「何それ?」
彰:「いや、電気消すとき(けす)便利かなって。」
修二:「このブタ、お前が作ったの?」
彰:「野ブタだよ。野ブタパワー知らないの?」
彰:「失礼します。」
修二:「何、何、何、何、気持ち悪いって。これ、これ、真似(まね)しないでくれない?これ。」
彰:「これ真似しないでくれない?これ。」
修二:「はっ。」
彰:「はっ。」
彰:「温かい(あたたかい)な。」
修二:「お前なんで家出してきたんだよ。」
彰:「いや、親父(おやじ)来ちゃってさ。」
修二:「なに?親父ってお前の?」
彰:「うん。本父(ほんちち)。いきなり会社継げ(つげ)、とか言い出してさ。大喧嘩(けんか)になっちゃって。」
修二:「そっか。お前の親父さん、社長(しゃちょう)さんだもんな。」
彰:「そう。でも帰りたくないんだよね。おいちゃん好きだし、豆乳(マメチチ)飲めるし、修二とかさ、野ブタと、毎日。」
修二:「毎日、毎日何?寝てんじゃんかよ。おやすみなさい。」
修二:「お前さ、いつまで家にいるつもり?」
彰:「何で?いいじゃんいいじゃん、楽しいじゃん。」
彰:「どうした?」
修二:「俺達もさ、こんな退屈(たいくつ)そうなおっさん連中みたいになっちゃうのなと思って。」
彰:「おんな風にはなりたくない!なりたくない!なりたくない、あんな風にはなりたくない!」
『来週までの進路(しんろ)ねぇ。一週間で自分の人生なんてか決められないっつーの。』
「修二、どうすんの?」
修二:「俺、あ、全然決めてない。」
「あっそう。谷はさ、テニスで大学の推薦(すいせん)受ける(うける)んだって。奈美(なみ)は服飾(ふくしょく)の専門(せんもん)で、美咲が英文(えいぶん)科だったらどこの大学でもいいみたい。」
修二:「すっごいね!」
『なんだ、結構皆マジに考えてるんだ。』
修二:「お前どうすんの?親父の会社とか継ぐの?」
彰:「もう進路の話は飽き(あき)たっちゃ。そんなことよりさ、俺らやんなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
修二:「何?」
彰:「野ブタを人気者にするんでしょうが。」
修二:「その話も前途(ぜんと)多難(たなん)だよな。だってこっちが何かしようとしたらすぐ変な噂が流れるし(ながれるし)。」
彰:「一体(いったい)どこのどいつがやってるんたろう。そんな嫌がらせ(いやがらせ)。」
修二:「暇なヤツがいるんでしょう。今度はさ、こっちから噂(うわさ)を流してみねぇ?」
彰:「いいね!先手必勝(せんてひっしょう)。」
修二:「いつまでもやられっばなしっていうのはバカからしいちゃな。」
彰:「バカらしいちゃな。」
彰:「じゃ、せーので、行くよ。せー野ブタ(のブタ)。ははは、すいません。せーの!」
『そうだよ。バカなことは永遠(えいえん)にゃってられねんだよ。俺達がここから、この空を見れるのは、あとほんの少しなんだから。』
「さっきからずっと気になってたんだけど、鞄に何つけてるの?」
修二:「別に何もつけてないよ。」
修二「あっ!いや、別に、これは、何も。」
「可愛いよね。」
修二:「これ?可愛い?」
「ねーどうしたの?それ、手作りじゃん?」
「上手だね、すごい。」
修二:「実はね、これ、小谷さんが作ったの。」
「うそ、小谷さんが?」
修二:「小谷が作ったんだってよ。」
「ねー小谷さん、小谷さん、これ私にも作ってくんない?」
「私も、私も。」
野ブタ:「うん。」
修二:「あのさ、野ブタの名前をもっと広く知らしめるために、野ブタグッズを販売(はんばい)するから。
彰:「で、こんなの売れんの?」
修二:「今時、こんな変てこりんなものをな、可愛い、可愛い、超可愛い、とか、キモ可愛い、とか、百パッセン可愛いとか、言って、絶対ヒットするんだから。」
彰:「あと、ブタ可愛いとか、まんまじゃねか、バカやロウ!」
修二:「けれで話題(わだい)も作れるし、野ブタってこんなの作れるんだって意外性(いがいせい)なところを見せ付ければ、野ブタの人気が上がること間違うなしだよ。」
野ブタ:「じゃあ、タダて配れば(くばれば)?」
修二:「いや、だから、お金を払って、初めてありがたみがわかるっつの?」
彰:「なるほど。」
修二:「いや、だからな、ここへ来て、野ブタの人気を一気に上げようっていう作戦なわけ。」
彰:「いよいよメジャー
修二;「もち、そんな感じで、製作(せいさく)費のほう、よろしくな。」
彰:「ババと喧嘩してるから、お金なんて、全然ない!」
修二:「マジで?」
修二:「こんばんわ!」
彰:「おじさん、父ちゃん(とうちゃん)まだいる?」
「なんだい今頃!昨日の夜帰ったよ。」
彰:「ほんと!よかったぁ!」
彰:「どうぞ、どうぞ。」
修二:「うっわぁ!なにこれ、親父さんと、喧嘩したあと?」
彰:「うちの親父さ、腕力(わんりょく)かだけは強いんすよね。」
修二:「これちょっとセコ過ぎるかな?」
彰:「いや、そのチープな感じが逆に(ぎゃくに)かわいいのよん。」
野ブタ:「野ブタパワー注入!」
修二:「何?」
野ブタ:「せっかくだから、入れたらいいかなって。」
彰:「その野ブタパワー注入したの、俺に、くれ!」
修二:「いや、なんで?」
彰:「知らないの?野ブタパワーの威力(いりょく)、マジハンバネから。」
修二:「野ブタパワーの威力。」
修二:「その手かあったか。」
彰:「その手ってどの手?」
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